旧約 2 / 66巻

出エジプト記

要約 出エジプト記は、神がアブラハムと結ばれた約束のとおり、エジプトの奴隷であったイスラエルの民を救い出し、ご自分の民とされる歴史です。律法と幕屋を通して彼らと常にともにおられることを示し、約束の地へと導かれます。

著者
モーセ
執筆年代
紀元前1445~1405年(伝承)
時代
出エジプトと荒野の時代

背景

出エジプト記は、創世記において神がアブラハムに与えられた約束が、実際の歴史の中でどのように成就したのかを示す書です。神はアブラハムに、その子孫が増し加わること、また彼らを通して祝福を与えることを約束されましたが、同時にその子孫がほかの国で旅人として暮らして虐げられること、そしてその地を裁かれた後に多くの財産を携えて出てくることまで、あらかじめ語っておられました。出エジプトは、まさにこの約束と予告が歴史の中でそのまま成就した出来事です。 ヘブル語の書名「シェモト(名)」は、単に人々の名を列挙するという意味ではなく、神が契約によって召された民を忘れることなく、彼らの歴史を引き続き導いていかれるという意味を含んでいます。この書は、古代オリエントの時代、強大な帝国であったエジプトのもとで、イスラエルの民が奴隷として生きていた現実を背景としています。当時ファラオは神のような存在と見なされていましたが、出エジプト記は、そのような絶対的な権力も神の主権のもとにあることをはっきりと示しています。 出エジプト記は、救いを漠然とした宗教的概念として説明しません。むしろ、抑圧と苦しみのただ中で、神が実際に働き、行動される姿を示しています。神はアブラハムとの契約を覚え、苦しみの中で叫ぶ民の声を聞かれる方として、ご自身を現されます。

内容

出エジプト記は、イスラエルがエジプトでの奴隷の生活から解放され、神の契約のうちに再び呼び集められていく過程を記録した書です。出エジプトの出発点は「神はアブラハム、イサク、ヤコブとの契約を覚えられた」という宣言であり、この書の贖いの歴史は、人間の決断や行動ではなく、神の契約に基づく記憶から始まります。 前半では、モーセの召命と十の災い、過越、紅海の出来事を通して、神がエジプトの神々とファラオの権勢を裁き、イスラエルをあがなわれる過程が展開されます。特に過越は、イスラエルが自らを救った出来事ではなく、血によって守られて生き延びた救いの出来事であり、その後の聖書全体で繰り返される贖いの核心的なしるしとなります。紅海を渡った後の荒野の旅は、解放がそのまま救いの完成ではなく、神ご自身が導かれる関係の旅が始まったことを示しています。 後半はシナイ山での契約が中心です。神はすでに救われた民と契約を結び、彼らとの関係を続けるためにご自身のみこころを啓示されます。律法は救いを得たり保ったりするために求められた条件ではなく、神がすでにあがなわれた民のただ中に住まわれるために自ら備えられた恵みの秩序です。続く幕屋の規定は、神が遠くにおられる方ではなく、契約の民のただ中に実際に住まわれ、ともに歩まれる方であることを具体的に示しています。 結局、出エジプト記は、アブラハムに与えられた約束、すなわちその子孫が虐げられても、神が彼らを裁きから救い出されるという預言の成就を示す書であり、解放の後も民を離れることなく、臨在をもって導かれる神の贖いの歴史を一つの流れとして証ししています。