新約 50 / 66巻

ピリピ人への手紙

要約 ピリピ人への手紙は、使徒パウロが獄につながれた状況の中で、ピリピの教会の聖徒たちに送った手紙です。投獄中という暗い状況でありながら、書全体を通して「喜び」と「感謝」という言葉が絶えず繰り返されるため、「喜びの書簡」とも呼ばれます。キリストに倣う謙遜と一致、そして苦難の中でも失われることのない、天に国籍を持つ者としての喜びを強調しています。

著者
パウロ
執筆年代
紀元後61~62年
時代
初代教会の時代

背景

ピリピという都市の特徴: ピリピはマケドニヤ地方の主要な町で、ローマの退役軍人が多く住む「ローマ直轄の植民都市」でした。住民たちはローマ市民であるという誇りが非常に強く、ローマの法と文化をそのまま守っていました。 ヨーロッパ最初の教会: パウロが第二次伝道旅行の途中で幻を見て、アジヤからヨーロッパへと足を向け、最初に建てた教会がまさにピリピの教会です(使徒行伝16章)。紫布の商人「ルデヤ」、獄の「看守」などが初期のメンバーでした。 手紙を書いたきっかけ: ピリピの教会は、獄につながれたパウロを助けるために、エパフロデトに託して経済的な支援(宣教献金)を送りました。パウロはこの温かい愛に感謝を伝え、病気だったエパフロデトがいやされて帰る際に、この手紙を持たせて送り出しました。

内容

ピリピ人への手紙は全4章で構成されており、キリスト者の生き方の姿勢を深く扱っています。 1章:福音にふさわしい生活と苦難の中の喜び パウロは、自分が獄につながれたことがかえって福音の前進に役立ったと告白します。生きるにしても死ぬにしても、自分の身によってキリストがあがめられることを願うと宣言し、聖徒たちに福音にふさわしく生活するよう勧めます。 「わたしにとっては、生きることはキリストであり、死ぬことは益である」(ピリピ人への手紙1章21節) 2章:キリストの謙遜に倣いなさい(キリスト賛歌) 教会内の分裂の兆しを警戒し、一致と結束のために「キリストの思い」を抱くよう語ります。2章5節~11節は聖書の中で最も美しいキリスト論の箇所の一つで、神のかたちであられたのに自らを低くして十字架で死なれたイエスの謙遜と、その方を高く上げられた神とをほめたたえています。 3章:律法主義への警戒と目標に向かう前進 パウロは、かつて自分が誇っていたユダヤ人としての経歴(血筋、律法による義)を、キリストを知ることの絶大な価値に比べればすべて「ふん土」と見なしていると告白します。後ろのものを忘れ、ただキリスト・イエスにあって上に召してくださる神の賞与を得るために、目標を目指して走ると宣言します。また、私たちの国籍はこの地上(ローマ)ではなく「天」にあることを思い起こさせます。 4章:主にあって喜びなさい & 足ることを知る秘訣 パウロは教会の二人の女性リーダー(ユウオデヤとスントケ)に主にあって同じ思いを抱くよう勧め、何事も思い煩わず祈るよう祝福します。最後に、どんな境遇にも処する「足ることを知る秘訣」を学んだと語り、ピリピの教会の支援に深い感謝を表します。 「わたしを強くして下さるかたによって、何事でもすることができる」(ピリピ人への手紙4章13節)